中学受験の算数で、誰もが一度はぶつかる壁が「特殊算」。その中でも最も有名で、かつ最も出題頻度が高いのが「鶴亀算(つるかめざん)」です。
大学生の皆さんは「連立方程式(xとy)」を使えば一瞬で解けるはずです。しかし、小学生に方程式を教えるのは絶対にNG! では、どうやって小学生に論理的に教えれば良いのでしょうか?
この記事では、小学生が直感的に理解できる「面積図」を使った教え方と、具体的な指導のコツを解説します。
1. 鶴亀算の基本マインド:教える前の大前提
まず、授業を始める前に講師が絶対に守るべき鉄則が2つあります。
- 「x」や「y」は絶対に使わない 小学生はまだ抽象的な文字式を習っていません。「鶴をx、亀をyとすると…」と説明した瞬間に、生徒の頭はフリーズしてしまいます。
- 「もしも全部〇〇だったら?」からスタートする 鶴亀算のすべての基本は「極端な仮定(もしも全部が鶴だったら)」から始まります。これを徹底的に意識させましょう。
2. 【基本編】王道の鶴亀算と「図解」の描き方
まずは、一番オーソドックスな問題を使って教え方の手順を解説します。
【例題1】 鶴(つる)と亀(かめ)が合わせて10匹います。足の数の合計は32本です。鶴と亀はそれぞれ何匹いますか?
STEP1:「もしも全部、鶴だったら?」と極端に仮定する
まずは生徒に「もし10匹全部が鶴だったら、足は何本になる?」と質問します。
- 鶴の足は2本。それが10匹いるので、
2本 × 10匹 = 20本になります。
STEP2:実際の数との「ズレ」に気づかせる
- 「でも、実際の足は32本だよね。何本足りない?」
32本 - 20本 = 12本(12本足りない)
STEP3:1匹入れ替えたときの「差」に注目させる
- 「じゃあ、鶴を1匹、亀にチェンジ(交換)してみよう。足は何本増える?」
- 鶴(2本)が亀(4本)に変わるので、
4本 - 2本 = 2本(1匹変えるごとに2本増える)
STEP4:ズレを埋めるために何匹入れ替えるか計算する
- 「12本足りない分を、2本ずつ増やして埋めていこう。何匹チェンジすればいい?」
12本 ÷ 2本 = 6匹- つまり、亀は「6匹」。全体の10匹から亀の6匹を引いて、鶴は「4匹」と求まります。
💡 必殺の教え方ツール:「面積図」を描いて視覚化する!
言葉や式だけで理解できない生徒には、「面積図」を描いて説明するのが中学受験の王道です。ホワイトボードやノートに以下の図を描いてあげてください。
【面積図の描き方】 縦軸に「1匹あたりの足の数」、横軸に「匹数」、面積が「足の合計」になる四角形を描きます。
(足の数)
4本 ┌────┐ ←亀
│ │
2本 ├────┼──────┐ ←鶴
│ │ │
0本 └────┴──────┘(匹数)
?匹 (10-?)匹
└── 10匹 ───┘
【図解を使った説明ステップ】
- 「全部が鶴だったら」の図を描く 縦2、横10の細長い長方形を描きます。「面積は 2×10=20 だね」
- 「足りない部分(亀の足)」を付け足す 実際の面積は32なので、12足りません。上の図の左側に、上に突き出るように「縦が2(亀の足4-鶴の足2)」の長方形を書き足します。
- 突き出た長方形の「横の長さ」を求める 「面積が12で、縦が2の長方形。じゃあ横の長さは?」と聞けば、生徒は「12 ÷ 2 = 6!」とすぐに答えられます。これが亀の数です。
★講師向けアドバイス★ 面積図は「足りない面積(差の合計)÷ 縦の長さ(1あたりの差)= 横の長さ(個数)」という図形の問題にすり替えることができる魔法のツールです!
3. 【応用編】テストの点数問題(引かれる鶴亀算)
鶴亀算には、生き物や買い物だけでなく「間違えると減点されるテスト」のパターンがよく出題されます。ここでつまずく生徒が非常に多いので要注意です。
【例題2】 1問正解すると5点もらえ、間違えると2点引かれるクイズが20問あります。合計得点が65点だったとき、正解した問題は何問ですか?
⚡ 生徒がよく間違えるポイント
「1問間違えたときの差」を 5 - 2 = 3点 と勘違いしてしまう生徒が続出します。ここは図や数直線を使って「もらえるはずだった5点がなくなり、さらに2点引かれるから、合計7点下がるんだよ」と強調して教えましょう。
【教え方のステップ】
- もしも全部正解だったら?
5点 × 20問 = 100点 - 実際の点数との差は?
100点 - 65点 = 35点(35点分、減っている) - 1問間違えると、何点下がる?(★ここが最重要!) 正解の5点が0点になり、さらに2点マイナスされるので、
5点 + 2点 = 7点(1問間違えるごとに7点下がる) - 何問間違えたか?
35点 ÷ 7点 = 5問(間違えた問題数) - 正解した問題数は?
20問 - 5問 = 15問(答え:正解は15問)
4. 授業の最後に必ずやらせるべき「魔法のクセ」
鶴亀算を教え終わった後、生徒には「見直しのクセ」を必ずつけさせてください。
求めた答えが出たら、「本当に問題文の通りになるか、検算(確かめ算)しよう」と声かけをします。
例題1なら、「亀6匹と鶴4匹で、本当に足が32本になるかな?」と計算させます。
- 亀:6匹 × 4本 = 24本
- 鶴:4匹 × 2本 = 8本
- 合計:24 + 8 = 32本!ピッタリ!
この「ピッタリ合った!」という成功体験が、算数の楽しさとテスト本番での自信に繋がります。
まとめ
- xやyなどの文字式は絶対に封印する!
- 基本は「もしも全部〇〇だったら?」という極端な仮定から始める
- 言葉でピンとこない生徒には「面積図」を描いて視覚的に教える
- 最後に必ず「検算」をして答え合わせをする習慣をつけさせる
鶴亀算の教え方がマスターできれば、小学生を指導するスキルは格段に上がります。焦らず、生徒が図を描き終わるのを待ってあげながら、一緒に「ピッタリ合う数」を見つけていきましょう!